【僕らの島生活】五島編(3)物足りなかった世界遺産候補の教会
美しい教会群に隠れキリシタンの歴史、他の地域、特に東京から見た五島はロマンティックなイメージに満ちています。明治に禁教令が解かれた後に建設された古くからの教会は、長崎や平戸にある教会などとあわせて世界遺産に登録しようという動きもあります。五島列島全体で50余、五島市で20の教会があると言われていますが、ネットで出会ったステンドグラスの写真に導かれ、思わぬ教会に出会うことができました。(ボクナリ 美谷広海)
堂崎天主堂 最初に向かったのが島の北東、隣の久賀島を望む奥浦にある堂崎天主堂。1908(明治41)年に建てられた五島最古の洋風建築物で、赤レンガのゴシック様式の建物はパンフレットにもよく使われているので、見たことがある人も多いのではないでしょうか。
信者だけでなく、五島のシンボル的存在で、長崎県のキリスト教関連遺産として福江島では唯一世界遺産候補に入っています。
教会には隠れキリシタン時代の資料館もあり、島外からの観光客にとっては、まず訪れる教会になっています。観光客用のバス停車場には、ちょうど島を巡るバスが止まっていました。期待を裏切らない美しい教会でしたが、正直他の教会を見た後では一番物足りなく感じました。
現在もミサが行われているとのことでしたが、島の人々の生活に結びついている空気が感じられず、観光地としてのオブジェとなってしまっている気がしたのです。
貝津教会のステンドグラスその後、水ノ浦教会を回った後、貝津(かいつ)教会に向かいました。
実は、五島を取材すると決めた、ネットで事前調査を行っているときに美しいステンドグラスの写真に出会ったのです。
その島の人でないと見ることができないような場所を訪れてみたいと地元に詳しく、人脈も多いと思われる人をSNSのmixiで調べていたところ、たくさんの写真を撮られているウィズブーさんのページがふと目に止まりました。
そのウィズブーさんのFlickrに掲載された写真の中でひと際見事だったのが光のコントラストが美しいステンドグラスの写真でした。
貝津教会は島の西部にあります。大きな道路から外れ、カーナビには載っていない砂利道を進んだ先にひっそりと建つ木造瓦葺きの素朴な雰囲気の教会です。外が眩しい白壁でしたが、中は暗く厳かな感じ。それでも木造ながらの暖かみと柔らかさが教会内を包んでいます。期待していたステンドグラスも見事でしたが、真っ平らな木の板の天井も珍しく、しばらく眺めました。
その後、ウィズブーさんにお会いして、オススメの教会を尋ねたところ教えていただいたのが楠原教会でした。
すでに日も暮れ始めていたので、教会に急ぎます。地元の観光パンフレットにも載っておらず、わずかに地図に名前だけが書いてあるのみです。
楠原教会実際に行ってみるとその趣きの良さに驚かされました。1912(明治45)年に建てられた堂崎天主堂と良く似た赤煉瓦の堂々とした建物は学校のグラウンドの脇に立っています。夕暮れ時に訪れたこともあり、建物はグラウンドと一緒に赤く照らされていました。
内部に入ろうとしたところ、すでにドアは閉まっていました。「残念、入れなかったな」と思っていたら、中にいたシスターが開けてくれました。
夕方の暗くなった教会内部は、斜めに差し込んだ光で荘厳な静かな空気が満ちていました。石造りのためか身が引き締まるような緊張感があり、観光客が場違いであると感じます。
シスターは無言で黙々と教会内を掃除しており、その静けさに息を潜めながら内部を見渡しました。
島にある4つの教会を訪れ、有名な教会から順に回っていきましたが、満足度の高かったのはその逆の順序でした。それぞれの教会には違う個性があり、比べてみることで違う良さも見えてきます。ただ、あまり有名ではない教会も観光地化されてしまうとその魅力を失ってしまうのかもしれません。
堂崎天主堂以外は観光客向けの駐車場もなく、観光バスなどでは訪れるのは難しい場所です。しかし、それを観光客が訪れやすいように整備してしまうとそこにある余韻や良さのようなものも一緒に失われてしまうのかもしれません。観光客が来なければ島の経済は活性化しないけれど、島の人たちが実際に生活の中で利用している教会だからこその魅力があるような気もします。旅人の身勝手と思いつつ、教会巡りを終えました。
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