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【僕らの島生活】五島編(10)世界遺産になっても地元にメリットはあるのか

5月 27, 2009

蕨小中学校の運動会が行われている途中で、世界遺産候補に登録されている旧五輪教会まで歩いて行ってみることにしました。五島最古の木造教会は、禁教令が解かれた後も世間から身を隠すように久賀島という離島の中のさらに驚くほどの僻地に立っていました。狭く、急斜面の山を縫うようにして作られた道路を歩きながら、この教会が世界遺産に登録され、観光客が来たときのことを考えていました。(ボクナリ 美谷広海)


旧五輪教会運動会が行われている最中でしたが、久賀島にある五島市最古の木造教会である旧五輪教会も訪れてみたいと思い、途中で抜け出して行ってみることにしました。

蕨小中学校から5、6キロの道のりで、丸田さんや地元の人からは「結構距離があるよ」と言われましたが、せっかくなので歩いて行ってみることにしました。

峠を登って振り返ると運動会が行われている学校と周りの集落が奇麗に見渡せ、運動会の歓声が山の上まで聞こえてきます。

ひと山越えたとこに福見という集落があり、そこからは車では進めません。道路は続いているものの、Uターンができない狭い道になっています。そこを更に進んでいくと、アスファルトの道は消え、落ち葉を踏みしめながら山を下っていきます。全部で3つ山を越えたところにようやく旧五輪教会がありました。所要時間は1時間半。教会は小さな港の脇にあり、水上タクシーであればかなり楽にここまで来れたのにと少し歩いてきたことを後悔してしまいました。


木造のアーチが素晴らしい教会は一見すると木造の小屋にしか見えません。世界遺産候補と言われなければ、古い民家と思って通り過ぎてしまいそうですが、中に入ってみると、木造ながら見事な連続アーチ構造の屋根になっており、職人による力作に感動させられます。

もし、教会が世界遺産に登録されればどうなるのでしょうか。都会から来る観光客が、山道を歩くことはないでしょう。久賀島の港から車でも40分かかかるこの山道を利用するよりも、船を使えば福江島から30分で行くことが出来ます。そうなると地元にお金が落ちることはほとんどありません。

来た道を戻りながら、最後の峠を越えて学校を見下ろしながら坂道をくだっていくと、歓声は消えてひっそりとしていました。最後の運動会の最後の瞬間に立ち会えなかったのはちょっと残念でしたが、もしかしたらこれで良かったのかもしれません。この島や地域、学校に特別な感慨をもたない外からの人が、最後の運動会の最後を迎えるという感動の場面にはちょっと不相応だったのではないかと思ったのです。


学校をしのぶ「思いを語る会」集落に戻ると、みんなが「結構遠くまでよく歩いていったなぁ」と少し見直してくれたようです。

運動会の後に開かれた、学校をしのぶ会という名の地域の食事会にも参加することが出来ました。

大人はお酒、生徒はジュースで参加しています。体育館の中で、子供や大人がまじってソーラン節を披露する大宴会となり、全員で校歌が何度も斉唱されます。誰も口にしませんが、この運動会が特別な意味を持つのを強く意識しているのをひしひしと感じます。

ここに集まっている人たちを結びつけてきた存在がある日から突然途切れてしまうのを誰も想像できないのかもしれません。帰りは、夜中の水上タクシー乗り、海風で酔いを醒ましながら深く黒が沈んだ離島の夜空を眺めつつ福江島に戻りました。

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